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この作品での登場人物 俺(オーナー名:尊(みこと)、本名:尾上 辰巳(おがみたつみ)) illust by yakou 極普通の一般人を目指す……はずの大学生。 『自分の欲望に忠実に生きる』をモットーとする性格を持つが、その反面割とお人よしで独り言が多く、真那曰く、ツンデレであるらしい。 蒼貴が自分の部屋に紛れ込んできた事から話は始まり、オーナーとなってからは双姫主を行うなど隠れた才能を発揮していき、卓越した技量を買われて杉原の専属テスターとしてバイトを始める。 また、目立たない様に動いているつもりがいつの間にか大事になっており、それが仇となって雑誌に載ってしまった。さらにはリミッター解除装置を狩ることから『首輪狩り』のあだ名まで付いてしまう始末である。 果たして彼は大学生活を神姫生活から守り抜く事が出来るのか…… 蒼貴(そうき): illust by sowelu とても礼儀正しく、努力家なフブキタイプである『俺』の神姫。 前のマスターにいい所を見せる事が出来ず、ついには捨てられてしまったが、『俺』によって敵の武器を破壊、奪取をする戦術を確立し、『俺』との特訓で培った特殊な技能と俺の出す独自の戦術で装備をものともしない戦いを持って敵に立ち向かう。 バーグラー戦にて素体が大破する大怪我を負ったため、『ホビーショップエルゴ』にてミズキタイプのパーツを使った改修をされて、神力開放と塵の刃という新たな力を得た。 紫貴(しき): 気丈で感情的、そのくせ甘えん坊な『俺』のもう一人の神姫。 OMESTRADA社によって作られたイーダプロトタイプであり、研究所で市販化のためのパーツの運用テストの日々を過ごしていた。 しかし、それに合格できず、リセットされそうになって脱走し、その中で真那に無理やり誘われて探していた俺と巡り会い、蒼貴の説得によって『俺』と行動を共にする。 正式に俺の神姫となった後は蒼貴にはできないブレードとサブアームによるパワーのある攻撃で武装破壊からトライクモードで蒼貴を乗せるなど、彼女の相棒として戦う。 真那(まな): by yakou 『俺』が始めてオーナーカードを交換した相手。傍若無人な性格をしており、『俺』に色々な話題を持ち込んではそれに付き合わせる。 お酒が大好きであり、何かにつけて祝杯を称した飲酒をしようとし、『俺』はそれでよく死にそうになるんだとか。 また、『俺』に「ミコちゃん」というあだ名で呼んでいる。 ルナ: illust by sowelu アーンヴァルタイプの真那の神姫。蒼貴と同様に礼儀正しい口調なのだがこちらは活発でポジティブな性格をしている。 各距離に対応できるが、その中でも遠距離での砲撃戦を得意とする。 緑(ゆかり): 孤児院存続のために『俺』に子供達と共に襲撃を仕掛けてきたリーダー格の女性。 大学生活の中で孤児院の年長者としてその運営や経理を院長に頼み込んで手伝わせてもらうなどクールな性格をしていながら非常に責任感が強い。 ヒルダ: ヴァッフェドルフィンタイプの素体を持つ緑の神姫。親は子に似るのか、 縁と同じ様な性格をしており、それに加えて強い者と戦う事を生きがいとしている。 武装はストラーフとジルダリアのパーツをベースに作り上げられた 阿修羅の如き、四つのアームを装備した強化アーマーを身にまとっており、 ハンドガンやショットガンからつなげ、四本のロングブレードで切り刻む重格闘戦を得意としている。 杉原: イーダプロトタイプを開発したOMESTARADA社 イーストラボラトリーの主任。イリーガル技術に頼らない最強を目指しており、 そのためにはイーダをワザと逃がして、チャンスを無理やり作って成功した後はアルバイトとして『俺』や真那を巻き込んだり、 修理の名目で一般人の神姫の補修用パーツとして自分の試験パーツを組み込んで代金の代わりにテストデータを要求したりと手段を選ばず、 性格がアレなマッドサイエンティストではあるが、その技術力は確かである。 輝(あきら): かつて第一回世界神姫大会において優勝を果たした実績を持つ盲目の青年。ある日、石火と神姫センターに向かっていた時に交通事故にあって重傷を負い、その際に失明してしまった。 その後は神姫大会の一線を退いて、石火との暮らしを大事にしつつも自由気ままにバトルロンドを単純に楽しんでいる。 また、石火の盲導訓練の施設に世話になってその経験から自分に出来る人間と神姫の絆の手助けの仕方を模索している様だ。 石火(せっか): 冗談好きでお調子者なハイブリッドタイプの神姫。かつては純正のヴァッフェバニータイプであり、二丁拳銃のみで全ての敵を射抜く事から『ダブルトリガー』の異名で恐れられている凄腕である。 輝と同様に交通事故にあってスクラップ同然となったが結によるゼルノグラードの素体パーツとコアを用いた大改修を行った結果、奇跡的に一命をとり止めた。 その後、盲導犬ならぬ盲導神姫としての訓練を受け、ゼルノグラードのコアに変わった事によって得た冗談好きな性格をもって輝を元気付けようとあの手この手を尽くしている。 また、世界神姫大会の日々が忘れられない様でその大会に返り咲く事を夢見ていたりもする。 結(ゆい):Vulcan.Labの社員の娘で中学時代から自身の手で神姫を修理、改造をこなす天才技師。 輝の才能に魅入られて、第一回世界神姫大会の時は石火の掛かり付けの技師として輝を裏から支えた。 事故によって石火がスクラップ同然の状態になった時は彼女に大改修を施して盲導神姫として蘇らせ、彼の面倒を見ている。 職人気質な性格なのか無愛想な印象もあるが、彼女の行動の通り、面倒見がいい。 早夏(はやか):ツガルコアにヴァッフェバニーの素体で構成されるハイブリッドタイプ。 ツガルの性格通りの天真爛漫な性格をしており、無愛想な結の性格は苦手だが、彼女を信頼している。 大抵、彼女の技術の実験台にされるため、一定の装備が存在しないが、装着される武装を軽々と使いこなしてみせる器用さをあるため、気にしていない。 実力は石火とタッグをするぐらいにはあるといったところである。 トップへ
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《掃射攻撃》(TP消費3)[白、黒、犬、兎、ツ、砲] 『連射』可能な射撃武器でのみ使用可能。 攻撃時に通常の数倍の弾薬を発射・消耗し、【命中修正】を向上させる。 消費する弾薬の量によって、【命中・威力】が変動する。 また使用した次のターン【IV-5】される。 【消費弾薬/命中補正/威力】 2 / +1 /+0 4 / +2 /+0 6 / +3 /+1 8 / +4 /+1 10 / +5 /+2 《全弾発射》(TP消費3)[全神姫] 『ミサイル・ショルダーミサイル』のみ使用可能。 攻撃時に任意のミサイルを全て発射し【命中修正】を向上させる。 残存していたミサイルの数によって、【命中・威力】が変動する。 また使用した次のターン【IV-5】される。 【消費弾薬/命中補正/威力】 2~3 / +1 /+0 4~5 / +2 /+0 6~7 / +3 /+1 8~9 / +4 /+1 10 / +5 /+2 《ツインアタック》(TP消費2) [黒、犬、猫、騎、武] 格闘攻撃専用技能。仲間と連携して格闘攻撃を仕掛ける。 ラウンドの開始時に仲間の神姫1人と一緒に《ツインアタック》を宣言すること。 一緒に攻撃を行う神姫はイニシアティブ値を決定せず、この技能の持ち主と一緒に行動する。 《ツインアタック》を成立させる為には、両者が同一目標に格闘攻撃を仕掛けなければならない。 双方の神姫とも【攻撃判定+5】される。 尚、ツインアタックのパートナーはこの技能を必要としない。 《対空攻撃》(TP消費2)[黒、犬、猫、騎、武、花、種] 《飛行》している相手への有効な格闘戦術を持つ。 目標の《飛行回避ボーナス》を無効化する。 《零距離射撃》(TP消費3)[全神姫] ミサイル関連以外の射撃武器で、射程1の時のみ使用可能。 射撃値に【格闘値÷2(切捨て)】を加えることが出来る。 使用後、次の自分のターンまで【回避-5】の修正を受ける。 《バッシュ》(TP消費3) [黒、猫、騎、武、花] 自分のターン開始時に《バッシュ》をするかどうかを選択できる。 選択した場合次の自分のターンが始まるまで【格闘威力+2】の修正を受ける。 尚、他の【格闘威力】が上昇する技能との併用は行えない。 《見切り》(TP消費3) [黒、猫、騎、武、花] 自分のターン開始時に《見切り》をするかどうかを選択できる。 選択した場合次の自分のターンが始まるまで【攻撃判定+5】の修正を受ける。 尚、他の【攻撃判定】が上昇する技能との併用は行えない。 《百花繚乱》(TP消費6)[黒、猫、騎、武、花] 自分のターン開始時に《百花繚乱》をするかどうかを選択できる。 選択した場合自分のターンが始まるまで【攻撃判定+10】及び【格闘威力+4】の修正を受けるが、【防御判定-20】の修正を受ける。 尚、他の【攻撃/格闘/判定】が上昇する技能との併用は行えない。 《直感》(TP消費3)[全神姫] 防御判定時に使用すると、【回避】(+5)の判定を得られる。 《狙撃》(TP消費3) [白、犬、兎、ツ、砲] 宣言したターンは移動不能。一回の射撃に関して、距離11~15での射撃なら【命中+5】、距離16~20の射撃なら【命中+10】の修正値を得る。 その代わり次のターンに【IV-5】の修正を受ける。 《指揮官》[全神姫] 《フォーメーション技能》使用時のTPが【-1】される。 《奇襲》(TP消費3)[黒、猫、兎、騎、武、花] IVフェイズに宣言。宣言するとそのターン【IV+10】される。 《奇襲》を宣言したターンでは、格闘武器しか使用できない。 《クイックドロー》(TP消費3)[白、黒、犬、兎] IVフェイズに宣言。宣言するとそのターン【IV+10】される。 《クイックドロー》を宣言したターンでは、【ハンドガン】分類の武器しか使用できない。 《GAアーム》[全神姫] 特殊な武装である、GAアームに関して習熟する。 GAアームに関する【判定】(+5) 《ぷちマスィーンズ》[全神姫] 特殊武装である『ぷちマスィーンズ』を使役する能力を得る。 この技能が無ければ『ぷちマスィーンズ』は使用不能。 《飛行特性》[全神姫] [全神姫] 飛行時に発生するペナルティを軽減する。 【命中修正(5)軽減】、【旋回修正(1)軽減】、【バックの消費(1)軽減】
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(しきがみひめ) AMATSU カードタイプ クリーチャータイプ レアリティ LT ATK DEF クリーチャー 異形 5 1 4 アビリティ 万妖集:2 左右の味方のクリーチャーのATKを+2する。 フレーバーテキスト 共同開発で生まれたってのはあの子か。なるほど。たいした出力だ。 Info designed by Yosuke Adachi/C04 第4弾コラボで登場した異形クリーチャー。 収録パック等 第4弾コラボ・ORIENTAL RADIO【 SQR5 U9FY DZCN Q9M9 】 関連カード 種族:異形 Ability:万妖集
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家に帰ったら予習と復習。これはもう習慣みたいなもので疲れたからって辞める日は無いなものだ。勉強が好きなわけじゃないけれど御蔭で授業の内容は頭の中に入るしテストで高得点を取れるから我慢我慢。 本当は真っ先にイシュタルの整備がしたいのだけど神姫なんかよりも学生の本分を優先すべきだと拒否された。前に神姫が存在しない世界でも生きていけるようになるべきだとか言われたし本当にイシュタルは神姫とは思えない考え方をしていると思う。 数学の問題集と復習用ノートと予習用ノートと筆箱を広げ後は問題を読んで答えを導き出すだけ。そう書くだけなら簡単なんだろうけどやっぱり勉強は好きにはなれないから結構辛い。 今日は数学が二時限あったから重点的に予習復習を行うことにした。国語や社会なんかは授業だけでも十分だから少なめに。それに神姫関係の職業を希望しているから余計に理数系には強くならなければならない。 どうしても分からない問題がある場合は学校に居れば先生に尋ねればいいし家にいればイシュタルに尋ねればいい。神姫自体が科学の申し子なだけであって中学の数学くらいは簡単に解いてくれるからありがたい。 「すると角A=角Bが証明出来る。ここまではいいか?」 「分かったような、気がする」 「しっかしりてくれマスター。三年生になればより複雑な図形が出てくるぞ」 「もう図形は見たくないよ…」 「嘘泣きをする暇があったら頭を働かせることだ。新しい問題文を作ってくるから私が戻ってくるまで基礎問題を反復!」 「うわーい、イシュタルさんスパルター」 そんなこんなを繰り返して夕食の時間前後には予習復習を終える。まだ中学生だから早く終わるけど進級進学をする度に授業の内容も高度になっていくから高校生になったら夕食後も自習は続くかもしれない。早い内にその辺りの時間調整を考えておいた方が良さそうだ。 しかし腹が減っては戦は出来ぬでござる。先ず夕餉の準備でござる。今日はチャーハンと野菜のスープ。下準備は朝の内に済ませておいたから後は鍋とフライパンで食材を煮たり炒めたり調味料を吹っ掛けたりするだけ。簡単な調理だけど栄養は十分に取れるとはイシュタルのお墨付き。 一人分だけだからパッと作れる。チャーハンは僕、スープはイシュタルが担当して十~二十分で完成。両手を重ねて頂きます。 「この高校なんかはどうだ。学生寮は有るし、近くに神姫センターもあるぞ」 「でもアルバイト禁止なのは辛くない? 高校生になるんだから自由に出来るお金は欲しいよ」 夕食ついでに進路相談。イシュタルの教育方針として出来るだけ両親にお金を集らないように生活をしているんだけどやっぱりお金は欲しい。だからアルバイト有りで学力高め、神姫バトルを出来る場所が近くにある高校を探している。 と言っても実は真面目には考えていない。卒業はまだ一年先だから極々偶に暗示してくる程度。両手を合わせて御馳走様と唱えれば進路相談は打ち切られる。 そして皿の片付けが終わればいよいよ武装神姫の時間だ。鼻唄混じりに戦友達を机に並べて意気揚々。 「じゃ、体の隅々まで検査させてもらうからね」 「頼む」 決して変な意味では言っていない。ネジ、ピンを触診。頭の中で理想形のイシュタルを想像して理想と現実を比較する作業をひたすら繰り返す。検査の結果、現状は目標からは程遠いコンディションであることが嫌でも理解出来た。昔と違って今の素体は特別製だからオーダーメイドの部品が居る。それを手に入れるまで我慢しなければならない。 最後の仕上げとして僕はゴーグル付きのヘッドギアを取り出した。これは何時でも何処でも神姫と一体化出来るライドオンギア…の試作品である。 試作品だから公式では使えないんだけれど僕はこれを検査道具として使っていた。イシュタルに疑似的なライドオンをしセンサーには異常が無いと判断すると直ぐにライドオンを解除する。 「はい終わり。やっぱりガタ付いてる部分が多いね」 「明日に修理するのだろう? 不快ではあるがもう少しだけ我慢しよう」 そう言って作業用の机から颯爽と跳び出したイシュタルはパソコンと繋いだクレイドルに腰を下ろしスリープモードに。僕もパソコンの方を操作してイシュタルのAIを素体からパソコンの中へと移動させる。公式で配布されているネット対戦用ソフトを起動、普段通りの装備させ、後は公式掲示板に張り付き対戦相手を見つけるか見つけられるかを待った。 『対戦、宜しくお願いします』 『はい、いいですよ』 しばらくして希望する条件と一致するマスターを見つけたので対戦の申し込み。お互いに見ず知らずの相手だから適度の挨拶を交わしキーボードを気障っぽくターン! してバトル開始。これで僕の神姫マスターとしての仕事は終わり。 イシュタルが戦っている間に対戦記録用ノートに今日の日付、対戦相手の名前と神姫の型名と使用武装と戦術とを書き込む。相手はサイフォス、武装を見る限りミドルから牽制ショートから攻め始めクロスに持ち込むインファイター、と相手の情報を全部書き終える前に戦いが終わってしまった。画面一杯に『You Win』が浮かび上がりバトルフィールドはチャット画面に入れ替わる。 『対戦ありがとうござました! もの凄く強いですね、瞬殺されちゃいました!』 『ミス・アスタロト(イシュタルのHN)!』 向こうのサイフォスが姿勢を正してイシュタルに向き直った。…またか。 『私を弟子にしてくれぇ!』 『ちょ、ちょっと、ルシア、いきなりどうしたの!?』 『マスターこそ先の戦いを見て何も思わなかったのか? 彼女の動きは完成された武術家のもの、正に我々の理想とするものではないか!』 サイフォスの興奮は収まりそうにない。かと言って通信を勝手に切断するのはマナー違反なので落ち着くまで待つことに。 『私は家事や勉学の補助もしていて忙しい。師事をするなら別の神姫にしてくれ』 イシュタルがそう答えるとサイフィスは弟子入りを諦めてくれた。実力が有るから弟子入りを志願してくる神姫は多いのだけれどしつこい神姫は本当にしつこい。そいつらに比べたら何て爽やかなサイフォスだろう。 『対戦ありがとうございました』 『次に戦った時はもっと頑張れるようになります』 別れの挨拶もそこそこに向こうのとの通信を切断してパソコンのディスプレイは元の対戦待ち合わせロビーに戻る。一旦対戦待機状態を解除してイシュタルにメッセージを送った。 『そっちの方の調子はどう? ちゃんと動く?』 『CPU、メモリ、キャッシュ、どれも問題無い。情報処理を妨げるバグも許容範囲内だ。戦闘に支障は出ない』 『オッケー、そっちの新品は買い替えなくていいわけだね』 ホッとした。これで残りの悩みの種は素体の不具合のみ。それも明日には解決する。 『問題無いようなら募集を再開させるよ』 『出来れば歯応えの有る相手を集めてくれ。数をこなしても相手が弱過ぎるとカンが鈍る気がするんだ』 『分かった。じゃあ、レート2000(セカンドリーグ上位)以上を条件に追記しておくから』 『レート2300(ファーストリーグ中位)は駄目なのか』 『それは厳し過ぎるって』 説得してレート2000で落ち着いてもらった。 募集を再開すると観戦希望者がドッと増える。1800(セカンドリーグ中位)位にすべきだったかなと反省するけど実力差が有り過ぎる相手と戦っても実るものが少ないのは確かだから気長に待とう。 それに五月蠅い神姫はパソコンの中。今なら今月の神姫グラビアをじっくり眺める事が出来る。 「「紗羅檀」と「ナース服」! この世にこれほど相性のいいものがあるだろうかッ!?」 『…後で覚えていろ、地獄に落としてやる』 …。 …。 …。 二時間ほど待って戦えた回数は僅か二十前後。その内の半分は冷やかし。冷やかしを含んだ勝率はキッチリ80%。戦術の相性とかステージの有利不利とかを考えると運が良い。就寝時間が間近に迫って来ているのでネット対戦を止めてAIを素体に戻した。 湯船のお湯を張っている間に新聞を読むことに。政治は機械が担った方がいいと主張する派閥と政治に人心は必要だと主張する派閥が争っているらしい。僕にはまだ投票権は無いけれど日本国民として真面目に考えるべきかなーなんて考えながら暇潰し。 「バスタオルは持ったか? 着替えは? シャンプーの残量は?」 「そこまで心配しなくても大丈夫よ。小学生じゃないんだから」 「私にとってはいつまでも手の掛かるマスターだよ」 「はいはい。分かりましたよ、お母様」 いざ、お風呂へ。の前に何となく振り返る。イシュタルが笑っていた。 「どうした? 風呂にお化けでもいたか?」 「幾つの頃の話をしてるんだか」 僕は小学生の頃そう言ってイシュタルに泣きついたことがあった。それを思い出しても自分でも分かるくらいに顔が真っ赤になり、ニヤニヤと笑う視線から逃げるようにお風呂場に向かう。 男子中学生の入浴シーン? 誰得なんだよ。その辺りはカットして洗面所を歯を磨いてから居間に戻る。イシュタルは図書館で借りた武術関係の本を読んでいた。 「いつものことだけど、熱心だね」 「私は武術神姫だからな。熱心にもなる」 「誰が上手いことを言えと」 「…ふふっ」 イシュタルが冗談を言うなんて珍しい。今読んでいる本が好みなのかな。新しい武装を買ってもらうより新しい武術との出会いを喜ぶなんて正に武術神姫と言える。マスターとしてもわざわざ遠くの図書館に行った甲斐があった。 が、感傷に浸り掛けたところでハッとなる。僕はその笑顔の正体を思い出した。イシュタルがああいう笑顔をするのは決まって僕を如何に甚振るかを考えている時だ。恐る恐る盗み見すれば内容は如何に武術に適した身体を作るかと言うもの。 機械である神姫にそんなもの必要は無い。今この場に人間は僕一人。何だか嫌な予感がしてきた。君子危うきに近寄らずとは言うが虎穴入らずんば虎児を得ず。僕には一歩進まなければならない。 「ねぇ、イシュタル。今一体何を考えているのかなぁ…」 「マスター、修業道具に呼吸制限をするマスクを選ぶと言うのは中々いいセンスをしていると思わないか」 「オー! ノー! 俺の嫌いな言葉は一番が「努力」で二番目が「頑張る」なんだぜーッ!」 まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい何時何処で何時何分に地獄の特訓が始まるのかは分からないけどバケツに血を吐くような想いなんて何とか何としても何があっても回避しなければならない落ち着けそして考えろ一瞬を争う場でも限り何事も先ず考えてからだパッと思いついた案は①特訓をさぼる②特訓をなかったことにする③諦める、現実は非常であるの三択僕としては①に○を付けたいんだけど唯でさえ優れている神姫のセンサーをさらに改良したイシュタルを騙すのは怪盗三世でも難しいから却下となると②、イシュタルの機嫌を取って考え直してもらうしかないしばらくセクハラ言動は慎もう涙が出そうだけど血反吐を撒き散らすよりはマシだ。 「マスター。さっきからブツブツと、一体どうしたんだ?」 「アニメ・ジョジョの奇妙な冒険第二部戦闘潮流、主役ジョセフ・ジョースターの声優は杉田智一氏」 「何故そっちの宣伝をするんだ」 「次回・黒野白太に人間の恋人が」 「猿も騙せない嘘予告だな」 「酷い」 自分の神姫の容赦無い言葉に落ち着いてきた心が傷付けられる。いつものことだから別にいいけど。それよりも眠い。お風呂から上がると眠くなる。 「もう僕は寝るから、消灯はお願いね。おやすみー」 「おやすみなさい、マスター」 頭の中ではイシュタルの機嫌を取る方法を考えていたけど体内時計には勝てなかったよ…。
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SHINKI/NEAR TO YOU Phase01-5 電子の闘技場、その中央で迷彩武装を纏った神姫が仁王立ちしていた。地には倒れ伏したアーンヴァルモデル。その武装は砕け散り、ぼろぼろの状態だ。健気にも身を起こそうと片手をつくが、そんな彼女を対戦相手は無情にも踏み潰した。 完全に機能を停止したアーンヴァルの回りに「LOST THE GAME」の文字が表示され、迷彩の神姫の頭上には「YOU’ER WINNER」の文字と共に勝利のスポットライトが降り注いだ。 「……ひどいな」 アーンヴァルのオーナーだろうか。バトル終了と同時にひとり男の子が筐体に駆け寄り倒れた神姫に呼びかける。嗚咽交じりの男の子の声に、倒れたアーンヴァルタイプがか細い声で何事か苦しそうに答えている。 大きな損傷(ケガ)でなければいいけれど。シュンの頭の上でゼリスも押し黙ったままその光景を見つめている。 「ふたりとも、かわいそうだよ……」 ワカナの言う通り、それは自分ことでなくとも心が痛ましくなる光景だった。 地に伏す天使型と勝ち誇る迷彩神姫。 このバトルの組み合わせがさっき筐体の前を離れた時から変わっていないことに気がついた。まさか、さっきからずっとあの迷彩神姫は一方的な試合を繰り返していたのか? 「初心者狩り……」 シュンの隣に立つ伊吹がポツリと言う。 「いるのよね。まだ神姫バトルを始めたばかりの初心者に一方的にバトルを持ちかけて、相手を何度も痛めつけるのを楽しむ卑劣なヤツがっ」 伊吹は泣く男の子から目を逸らすように対戦相手を睨みつける。 眼前の悲壮な神姫と少年の姿も全く意に介さない様子で、フィールドに屹然と立つ迷彩の神姫。その奥のシートではオーナーだろう、黒い長ランを纏った厳つい大男が大仰に高笑いをしていた。 「がっはっは、そんな腕でこの番長治(バン チョウジ)様に立ち向かおうとはな。笑いが止まらぬとはこの事だな、ベガよ?」 「イエス・サー。自分たちにとってはまさに取るに足りぬ相手であります」 「うむ。誰か他にこのワシと勝負を張ろうという猛者はおらんのかっ!」 がっはがっはと肩を揺すりながらギャラリーをギョロリと見渡す番長治。誰もがその眼光から逃れるように身を引きあうなか、ひとりがスッと筐体の前へと歩み出た。 伊吹だ。 「ちょっと、アンタ! ダウンした神姫を痛めつけるなんて、どーいうつもり? そんな事して恥ずかしいとは思わないの?」 突然の伊吹の登場に番長治が鋭い目を向ける。それを真っ向から睨み返しながら、伊吹はさらに詰め寄った。 「おい、やめとけよ」 シュンは慌てて止めに入る。だが伊吹はシュンの制止も構わずに憤っている。不味い、ヒートアップしてやがる。 「やめないわ。こんな神姫バトラーの風上にも置けないようなヤツ、許せない!」 「ぷんぷんだよ~っ」 身を乗り出す伊吹の肩でワカナも頬っぺたを膨らませる。そんなシュンたちの騒ぎは相手を刺激するには十分だったようで、 「なんじゃあ、お前らは?」 番長治はそのドラ声をシュンたちに向けた。 仕方がない……シュンは軽くため息をつくと、熱くなる伊吹を押しのけ自分から前に出た。このまま伊吹に任せていたら、場所も考えず取っ組み合いでも始めそうだもんな。 「さっきの戦い見せてもらったけどさ、いくらなんでもあれはないんじゃないのか?」 「ふん、勝負事に情けは無用。一度タイマンの場に立ったからにはガチンコの何が悪い」 「サーの言う通りだ。戦場で対戦相手に情けを掛けるなど、愚行に過ぎない」 平然と言い放つ番長治と神姫ベガに、シュンは言い返す。 「だからって、子供相手に大人気ないだろう」 「そうよ、あの子とあの神姫に謝りなさいっ」 押しのけられた伊吹は始めはムッとしたものの、シュンが番長治に食い下がるのを見て加勢する。いつの間にかギャラリーが固唾を呑んでことの成り行きを見守ってる。 「おい、あの娘って……」 「あのマンチャオタイプの神姫、間違いない。センターランキング6位の伊吹舞だ」 群集たちは互いに噂しあう、その囁きはシュンたちにも聞こえてきた。センターランキング? 意味の分からないシュンに対し、番長治はピクリと眉をひそめる。 「なるほどのう。貴様か、このところ急に浮上してきたとかいう新進気鋭のランカーっちゅうのは……」 「だったらどうだっていうのよ? なんなら今から私が相手になってあげるわよ」 不敵な笑みを浮かべる伊吹の手の上で、ワカナが「しゅっしゅっ」とジャブの動き。ヤル気満々だな。 しかし番長治は「ふっ」と鼻を鳴らし、あくまでもシュンにその眼光を向けてきた。 「ふん。威勢の良さも後ろ盾にあってのこととは、笑わせるのうっ」 思わずシュンは固まってしまう。それを聞いた伊吹の方が憤然とする。 「ちょっと、シュっちゃんは関係ないでしょう?」 「ランカーだか知らんが女は黙っとれい。ワシは今この小僧と漢(おとこ)の話し取るんじゃ」 そんな伊吹の反論を受け流しつつ、番長治はあくまでもシュンに向かって鋭い視線を送る。 「ワシの行いにイチャモンつけたいっちゅーなら、どっちが正しいかバトルで決めるのはどうじゃい? それとも貴様のそいつは飾りか?」 番長治の太い指の先には、シュンの頭に乗るゼリスの姿があった。いきなり指を突きつけられ、ゼリスは五月蝿そうに目をパチクリさせる。バトルフィールドでは番長治の神姫、迷彩武装のベガが指をクイクイと折り曲げ誘いのジェスチュア。 あからさまな挑発だった。両手に紙袋を下げたシュンの姿を見れば初心者ということは一目瞭然なのだろう。あれこれと理由を付けて、ようは番長治の目的はあくまでも初心者をいたぶることなのだろう。 ――どうする? シュンは逡巡する。このままみすみす相手の誘いに乗るのは馬鹿げている。揉め事は出来れば避けたい。 けれど。筐体を囲むギャラリーの前に小さな男の子が立っている。手には大切そうに傷だらけの神姫を抱きしめ、シュンをジッと見つめている。 その男の子の目から伝わってくる想い、期待に応えたいと思う反面、シュンはまた気づく。神姫バトルはシュンだけで行えるものではない、神姫とそのオーナーのふたりで挑むものなのだ。 「ゼリス……」 シュンは頭上の彼の神姫へと声を掛ける。神姫バトルをするということは、負けた場合、オーナーではなくパートナーである神姫の方が傷を負うことになる。ゼリスをそんな危険な目に遭わせていいのか。何より、このいつも何を考えているか分からない、気ままでおしゃまな神姫は、シュンの勝手に付き合ってくれるだろうか? シュンの中に様々な想いが次々と渦巻く。 しかし、そんなものなど何処吹く風。彼の神姫は、いつものように「ふむ」と顎に手を当てた決まりのポーズで小首を傾げると、いつものようにおもむろにすっくと立ち上がり、いつものように変わらぬ淡々とした声と口調で、 「……お断りさせていただきます」 さらっと言った。言いやがりやがった。 「お前なっ! この場面でそれかよっ!」 思わずシュンもマジ突っ込み。対しゼリスは淡々と答える。 「この場合、なるほど。不当な暴力を受けた先ほどの神姫への同情心から戦いに赴くのは、感情を基盤おいての行動であるなら有り得るのかも知れません。いえ、きっとそれが最も普遍的な選択なのでしょう。しかし考えてみてください。シュンは先ほどの天使型とそのオーナーとも、またそちらの筐体で待つおふたりとも今日始めて出会ったはず。言わばどちらも無関係な人間、第三者です。その第三者のいざこざに無用な足を踏み込む行為の必然性が、私には理解しえません」 何か言い返そうとしたシュンは、続くゼリスの言葉に押し黙った。 「また、仮に戦いに赴き、勝ちを得ることができたとしましょう。しかし、それが一体何になるのでしょうか? 勝利を得たとしても傷ついた彼の神姫が癒えるわけでもなく、何か特別な報いがある訳でもありません。むしろ戦いによって確実に犠牲者が増えるだけです。同情、報復、一方的な正義の証明行為。それらを追い求める中でのこの戦いには、何らメリットはありませんよ?」 正論だった。ゼリスの言ってることは、多分正しい。けれど、だからこそ悲しかった。 この一週間。シュンはゼリスのことを理解しようとずっと心を悩ませ、なんとか歩み寄ろうとした。でもそれは結局シュンの独り相撲だったのか? 道中のゼリスの言葉。今思い返すとその意味が良く分かる。ゼリスがシュンと一緒にいるのは、彼のことを認めているからか。きっと、違う。オーナーは自分の神姫を選べるが、神姫は自らのオーナーを選ぶことはできない。ゼリスにとっての彼は、ただ自分を起動させた人間に過ぎない。ゼリスにとってシュンは……僕は必要とされていない、のか。 ガックリとうなだれるシュン。 「イテッ」 そんなシュンを上から逆さまに覗き込んだゼリスは、彼の額にデコピンをかました。 「全く、この程度で落胆とは先が思いやられますね。シュンは往々にして物事を早合点する傾向がありますよ、困ったものです」 真意が分からずキョトンとするシュンに構わず、ゼリスは続ける。 「いいですか、シュン。私は第三者のために戦うことは否定しましたが、自分たちの為に戦うことまでは否定していません」 「え……、ってことはっ」 「世に君臨する王であろうとも、地を這い蹲る敗者になろうとも、皆すべからず共通する過程を通過します。それが初陣、初めての戦いです。例え栄光に満ちようと、苦難が待ち受けようと、すべては最初の戦いを経験したその先にこそあるのです。そんな大事な一戦を、半端な同情心や勢いだけで行おうとしないでください」 期待の輝きを取り戻したシュンに、どこか不満げにゼリスはポツリとつけ足す。 「それに初めての戦いを第三者に奉げるなんて、不興です。大切な一戦だからこそ、誰かのためでなく私たちの為に奉げるべきではないでしょうか」 ゼリスの強い光を灯したエメラルドの瞳を、シュンはただ強く見つめ返した。 言葉はいらない。 ゼリスが僕のことを何とも思っていない? 馬鹿だ僕は。ゼリスはしっかりと状況を認識した上で、シュンの無思慮を諭し、それでも彼の要望に応えてくれた。相手のことを信頼できていないのは自分の方じゃないか。 「ええ~い、さっきからブツブツと……。戦うのか戦わないのかハッキリせいやっ!」 苛立つ番長治の恫喝も、今のシュンとゼリスには関係がなかった。 シュンは無言で歩き出すと、伊吹の静止を振り切って筐体のシートへと腰を下ろした。 ゼリスが彼の頭から飛び降り、エントリーボックスへと着地する。 「私はあなたの為に戦います。あなたも私の為に戦ってください。シュン、これが私たちの公式戦デビュウです」 静かに宣誓するゼリスにシュンは短く「ああ」と頷いた。 やってやるぜ、バトル開始だ。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
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前へ 先頭ページ 次へ 第四話 それぞれの正義 夜はまだ明けない。それどころかさらに深まる時刻だった。 ぼたん雪のかすかな音を、サーッ、というサルーンの――車にしては静寂な――エンジン音がかき消している。つまりそこだけはサルーンが支配しているということになる。 サルーンの周囲はサルーンの世界であり、雪の入り込む余地は無かった。サルーンの所有者は誰かといえば鶴畑であり、つまり車の周囲は鶴畑の支配する世界であり、その世界はある一定の範囲の空間を持ち、サルーンを中心に同等の速度で動いているといえた。 サルーンが去ってしまえば追いやられた雪の世界がふたたび戻ってくるが、サルーンの周りは雪などその辺の石ころと同等であり、言い換えれば絶対的に鶴畑の支配が及んでいるのだった。 鶴畑家、ひいては鶴畑コンツェルンとはそういう組織だった。自らの支配できる範囲を、絶対的な権力で押さえつけるやり方である。範囲を少しでも外れるものに対しては途端に興味を失ってしまうが、手の届くところに一ミリでも入り込んでしまえばそれは否応無しに、たちどころに鶴畑の支配を受けることになるのだった。 独裁者、絶対王政、などという言葉が似合った。武装神姫に関して形容するなら、鶴畑は裏の世界の表の帝王だった。 被支配者に対し、支配していると強固に分からせるやり方。 それは支配という概念に関して、夢卯理音の持っている、「支配していることを被支配者に絶対に気付かせない」支配論とまったく相対する理論だった。 非効率的だ。と、理音は思った。 相手に自分が支配していることを分からせるやり方はたしかに方法としては強力だが、オープンであるがゆえに穴が出来ざるを得ない。加えて被支配層との無駄な対立、そしてそこから派生する紛争が確実に勃発するのだ。被支配層は支配から逃れるために真っ向から対抗しつつ支配の穴を突こうとし、支配者は自らの軍で反乱を鎮圧しつつ見つかった穴を塞ぐ。穴は無数にあり簡単には見つからないから、結局戦いはいつまでも続くのだ。どちらかの戦力が疲弊するか、穴を突かれて支配者が暗殺や処刑されるかするまで、である。 そして単純に考えれば、純粋戦力が打破される懸念に加えて、支配者側には穴を突かれてトップから瓦解する懸念があるわけだから、ウィークポイント比率は支配者対被支配者で二対一、ゆうに半分もの差がそこにある。支配者は権力と戦力をふんだんに利用したパワープレイで、多くは純粋戦力面を増強するが、反乱を早期に鎮圧できるならまだしも、対立が長引けば穴を突かれて一撃必殺される危険性は加速度的に増大してゆく。 リーダーを失った組織は、例外なくもろい。すぐに後継者が現れるならいいが、後継者は後継者として完成するための育成機関があるわけで、育成が完了していれば問題ないがだいたい間に合わない。 鶴畑の支配体制は鶴畑が経済的に強大すぎるほどの力を持っているそれゆえに、資本主義社会の上においてのみ成立する体制なのだった。 これに対する理音の支配論の有効性は、さらに著しく行を割いてしまうため詳しく述べない。前述の懸念がほぼ綺麗に無くなるのだから、それだけ有効なやり方だとだけ述べるにとどめておく。 非効率すぎてやる気が失せる。理音はドアにひじをついて、真っ暗な夜の街を見ながらため息をついた。 窓に、車内灯に照らされた鶴畑興紀の横顔が写っている。彼は腕組みをしながら背もたれに長躯を預け、目を閉じていた。眠っているのだろうか。 彼は支配者としての優越感を味わいたいだけなのかもしれない。オープンな支配の、支配者に対するリターンのほとんどはまさにそこにある。支配していることを手に取るように実感させてくれるのだ。 その面白さは、理音にも、分かる。 胸元がもぞもぞと動き出した。 「ねえ、もう出てもいい?」 そうだ。あれからずっと胸元にクエンティンを押し込んでいたのだ。 「ごめん、いま出すね」 入れるときは首元からだったが皮膚に装甲の突起が当たって痛かったため、理音は裾をまくって下から手を入れ、クエンティンを取り出した。 彼女の姿は変わったままだった。おそらくあのアイスバーンの下から出てきた神姫の仕業だろう。原理は分からないが合体してしまったらしかった。そのおかげで私は助けられたのだから、文句は言えない。 「なるほど、それが例のプロトタイプか」 いつの間にか鶴畑興紀が目を覚まして、クエンティンを見つめていた。もともと眠っていなかったのかもしれない。冷たさは幾分感じられるが、獲物を狙うような、残忍な目、では無かった。能ある鷹は爪を隠すというように、彼も本性を隠しているのだろう。 「違うわ、融合しちゃったのよ」 クエンティンはことの顛末を話した。 「フムン、やはり単なる強化パーツではなかったか。一体まるごと新型の神姫を作って、対称の神姫に合体、いや、融合させる方がもっとも強力だろうからな。名前は?」 「アタシはクエンティン」 「お前じゃない。知っている。私のルシフェルに傷をつけた神姫は忘れん。お前の中にいるその試作型だ」 『独立型武装神姫総合戦闘支援システムプロトタイプ、エイダです』 「やはり独立したAIを備えていたか」 表情をまったく変えずに、興紀は言った。 「ねえ、いま、やはり、って言ったわね。『やはり単なる強化パーツではなかったか』って」 理音は言葉尻をとらえて訊いた。 「鶴畑はこれと何か関係しているの?」 「鶴畑はこのプロジェクトの筆頭出資者だ」 興紀はなんら隠すそぶりも見せずに答えた。 「プロジェクト?」 「次世代強化パーツ開発計画、メタトロン・プロジェクト」 大仰な名前だな、と、理音は思った。 「だがこれで分かった。次世代強化パーツ開発計画などというのは表向きで、実際は次世代の武装神姫開発計画、あるいはそれと同等の計画と呼ぶのが正しいようだ」 「もしかして、それを確かめるためにあそこに来たの?」 「筆頭出資者としてプロジェクトの詳細は把握するのは当たり前だ。だがプロジェクトチームはチーム以外の関係各所に対して微塵も情報開示しなかった。だからこの機に確かめに来て、可能なら回収するつもりだった。そこにたまたま貴方が居合わせ、さらに回収目的にあの新型どもが現れ、危機を察した試作型は貴方の神姫に融合した」 さっきは貴様、って言ったくせに。と理音は思った。 「私達は巻き込まれたわけか。で、そのプロジェクトの存在も教えた以上、帰すわけにも行かないってことね」 「可能なら神姫だけを持って行きたいが、それはあなたが許さないだろう、それにもうあなたにも危険が及ぶ可能性がある」 「私を助けるのは鶴畑のイメージ戦略? 私はお荷物なわけか」 「どうとってもらっても構わないが、お荷物だとは思わん。あなたのシステムに対する挑戦能力は、正直言うと私も見習いたいくらいだ。例の瞬間移動はあなたが発祥だ。もう使えなくなったのが気の毒だが」 「……それは、どうも、ありがとう」 理音は驚いた。お世辞だとしてもあの鶴畑の、しかも長男からそんな言葉が聞けるなんて。 「ともかく、ということはあなたも詳しくは知らないわけね」 「試作型があそこにいた理由だけだ。プロジェクトチームの一部が造反を起こし、二機の試作型を奪って他社に情報を売ろうとしたと聞いている。一機は奪取に成功したがもう一機は自ら逃走。後はあなたが体験したとおりだ」 「あの一つ目の神姫みたいなのは?」 「新型神姫の量産試験型だろう。素体のみで大したAIも積んでない。だが、拳銃を弾いたのが気になる」 理音は先ほどのことを思い出した。拳銃弾が命中したにもかかわらず、それだけでは壊れず、電柱に激突してやっと爆散したのだ。それもいままでクエンティンがダメージを与えていたからそうなったのであって、あれがもし無傷であったらと考えると……。 理音は武者震いを禁じえなかった。 「融合する前のクエンティンが戦ったとき、あんなに細い骨格に切り込むことすらできなかった。それに、神姫のパワーじゃないって言ったわ」 「うん、あれは下手すると素手で人を殺せるわね。レーザーカッターみたいなのを使えば、鉄板なんて紙きれだと思う」 クエンティンが答えた。 「もうただの趣味のための道具ではないな」 興紀は再び背もたれに身体を預け、ふう、と息を吐いた。 「これからどこへ?」 「ひとまず私の屋敷だ。そこで今後の対策を練る。あなたとその神姫にも協力してもらう。どうせあなたの神姫から、プロトタイプはもう引っぺがせないだろう」 『機密ロックが掛かっています。責任者が許可するか死亡しない限り、融合は解除できません』 「ご丁寧にありがとう」 『どういたしまして』 「その責任者って?」 「最悪なことに、造反組のリーダーだ。たしか、ノウマン、とかいうEU人」 「そう……」 それでひとまず会話は中断した。 ぼたん雪が降りしきる暗い夜道を、真っ黒なサルーンが高級車特有の静かなエンジン音を立てて走る。ヘッドライトが照らす道は轍の出来た雪道だけで、周囲がどうなっているかは分からない。 この道はまっすぐ行けば、郊外の鶴畑邸へ続いている。 到着までまだ二十分少々掛かるとのことだった。 車内は沈黙が支配してしまう。 が、理音は落ち着かなかった。 会話をしていなければ不安なのだ。相手が鶴畑だというのが気に食わないが、この際どうでもいい。まあ、性格はともかく、顔だけ見れば良い男だからそれでチャラにしてやろう。などと思いつつ、理音はかねてから聞きたかったことを切り出そうとした。 が、先に切り出したのはクエンティンの方だった。 「ねえ」 「なんだ」 「アンタ、自分の神姫が負けたら片っ端から廃棄処分にしてるってホント?」 あからさまに侮蔑と敵意を込めた口調であった。 これにはさすがの理音も肝を冷やした。 だが興紀は悪びれた様子も無く、いつもどおりの淡々とした表情で、 「そうだが、それがどうした」 と答えた。 この返答の仕方がクエンティンの堪忍袋の尾をぶち切ったらしかった。 「やめなさい、クエンティン!」 とっさに理音が静止していなければ、クエンティンはブレードを展開して興紀に襲い掛かっていたかもしれなかった。人工知能基本三原則を無視できる一つ目どもと同じ出自の神姫と融合しているのだから、その可能性はあったのだ。 一歩間違えれば殺されていたにもかかわらず、興紀は動揺するそぶりすら見せなかった。 「出来れば理由を聞きたいわ。よろしいかしら?」 いまだブツブツくすぶり続けるクエンティンを押さえつけながら理音は言った。 興紀はしばらく目をつぶっていたが、一度深呼吸をした後、話し始めた。 「武装神姫は道具だ」 その一言目だけでクエンティンがびくりと動くのを理音は感じた。 「神姫とは趣味のための道具、ツールでしかない。釣竿やゴルフクラブ、あるいはゲーム機。それらと同等だ」 「使えない道具は棄てるというわけ?」 「単純に言えばそうだが、ただ棄てるだけでは意味が無い。神姫という道具は蓄積された戦闘データを受け継がせ、必要な装備を移行させ、より洗練されたボディに移し変えるものだ。より自分に合った洗練された道具を作り出す」 自分とはもちろんオーナー自身のことだろう。 「棄てられた神姫のことは考えないのね」 「何の意味がある? いちいち道具に思い入れていたらキリが無い」 「神姫は意思を持っているわ。私たちと同じ意思が」 「下らんな。人工物に意思があるなどというのは幻想だ。有ったとしても邪魔なだけだ。必要ない。神姫に人権を与えようとする運動が盛んなようだが、反吐が出る。モノに権利など要らん。面倒くさくなるだけだ。理解が出来ん」 会話している最中、何度もクエンティンがもがくのを理音は押さえつけていなければならなかった。 ここまで話しただけで、理音は彼とは武装神姫、ひいては人工知能に対する見識まで決定的な乖離があることを思い知った。 彼は武装神姫を知性体とは見なしていなかった。彼にとって、武装神姫とは自分の趣味を行うために必要な道具であり、それ以上でも以下でもないのである。 おそらく彼の持論に対して、過半数の神姫とそのオーナーは反発を示すだろう。なぜならば彼の持論を一かけらでも認めたが最後、いままで築き上げてきた自身と神姫との蓄積の全てが、無意味なものになってしまうからだ。 だがその点で言うなら、幻想だとするのも間違ってはいない。そもそも、どれが現実でどれが幻想だと区別するのはもはやこの時代においては意味をなさない。目には見えない実体の無いものが多すぎるからだ。コンピュータデータ然り、人工知能の意思然りである。だが、難しい理屈を抜いても、人々にとってそれは「ある」ように感じられる。ならば「ある」とした方が後々落ち着くのは道理だろう。人は幻想がなくては生きて行けないのだ。 たとえ武装神姫に意思があるというのが幻想だとしても、「ある」と感じられるのが重要で、多くの人々はそれを認めているからこそ、神姫の人権運動が起こるのである。 だが彼は、違う。鶴畑興紀という人間は、武装神姫の意思が「ある」とは感じられないのだ。理屈のあとさきは問題ではない。どうであれ彼が武装神姫に意思はないと感じたならば、周囲がどんなに「ある」とまくし立てたところで、彼にとってはどうあがいても「ない」のである。 それが鶴畑興紀の正義なのだ。話し合いの余地の無い、正義。 私が武装神姫でシステムの裏をかこうとするように。あいつが公式装備以外を絶対に使わないように。 だから彼がたとえこの先神姫を棄てても、批判することは出来ても糾弾したり弾劾したりすることは決して出来ないのだ。 「……あなたの思想は認めるわ」 「お姉さま!?」 「でもやっぱり私は、個人的感情として納得することは出来ない」 「それでいい。個人の思想や正義は誰にも侵害されない。同時に自分の正義で他人を押しつぶしてもならない。最近私たちの思想に対して正義の味方気取りで向かってくる馬鹿がいるが、そんなものは正義の味方でもなんでもない。ただの押し売りだ」 もっともだ、と理音は思う。 彼の正義は、他人の正義を侵犯したことは少しもない。 武装神姫のバトルは認められた戦いであって、対戦者相互の個人的な事情でないかぎり正義がぶつかることはまず、無い。 正義の味方というのは、強者の正義で弱者の正義が侵犯されたときに現れるのであり、それ以外で現れたのなら正義の味方は転じて悪の権化と化すのである。 自分を含む過半数のオーナーと神姫に対して鶴畑三兄弟とは悪に違いないが、彼らは経営レベルはともかく直接関係のあるユーザーレベルにおいてはよくよく見ればただバトルをしているだけであって、正義を振りかざして他人を貶めることは何一つやっていないのである。 この先武装神姫の人権が認められてからもまた、彼が神姫を棄て続けるとすれば、それは明らかに人権侵害であり犯罪であるが、神姫に人権が出来るなら彼はたちどころに武装神姫から手を引くことは容易に予想できる。 彼のような人間は決して一人や少数ではないのもまた事実なのである。神姫に人権を認めたなら彼らの思想を侵害してしまうのであり、また経済的に見れば甚大な損失が計上されるのは間違いない。 長い間、「神姫には意思はあるが人権は無い」とする矛盾した体制になっている理由はここにあるのだ。 漫画の神様がロボットは友達だと教えてくれたこの日本においても、だからこのさきしばらくは、人工知能や武装神姫に人権が認められることは無いだろう。 ◆ ◆ ◆ 車の心地よい振動が眠気を誘う。考えてみれば今は寝る時間だ。 仕事明けで、しかもあんな体験の後だったから、理音はひどく疲れていた。 仕事のことは鶴畑がなんとかしてくれるだろうという甘い考えに浸りつつ、まどろみの中へ沈んでゆく。 が、睡眠への埋没はすんでのところで叶わなかった。 『警告、後方より脅威、高速接近中。数、一』 唐突にクエンティン、いや、彼女の中のエイダが言った。 「追っ手だと? じい」 「申し訳ありません、撒いたはずなのですが……」 「車じゃないわ」 理音が後ろを見て叫ぶ。 青白い交点が、サルーンを追っているのが見えた。 「神姫か……!?」 『脅威詳細確認。警告。敵はMMSタイプ・アヌビスです』 「アヌビス?」クエンティンが訊ねる。 『私と同じプロトタイプです。私の開発コードはMMSタイプ・ジェフティです』 「片割れというわけか。虎の子をまさか実戦投入してくるとはな。じい、屋敷まではあとどれくらいだ?」 「あと五分少々です」 「追いつかれるぞ」 「アタシが出る」 「何?」 クエンティンが手を上げた。 「だって、片割れなんでしょ? だったらこの子と融合してるアタシが相手するしかないじゃない」 『現状ではアヌビスに勝てません』 「……うそ?」 『サブウェポン、その他各機能を駆動するためのデバイスドライバがインストールされていません。手動でプログラムを組むことは出来ますが、本来の性能を発揮できず、また大きな負荷がかかります。現状の戦力比は本機を一として、アヌビス、三二七です』 「冗談みたいな戦力比だな」 『事実です』 「あなたが出て捕まったら意味が無いわ」 「このままでも一緒よ!」 「ねえ、あなた、あのルシフェルとかいう神姫は持ってきてないの?」 「バトル以外で持ち出すわけが無い」 「役立たずね」 「なんだと!?」 「お二方、けんかをしている暇はございません」 運転席の執事がいさめる。 「屋敷まで着けば対空ファランクス砲があります」 「何でそんなもの日本の屋敷に付いてるのよ」理音が突っ込む。 「鶴畑の敵は多いんだ」興紀が答えた。 「ですからそれまで、クエンティン様が足止めしていただければ、追い払うことは出来ます。これしか方法がありませんぞ」 一瞬の沈黙。 「止むを得んな」 興紀が言った。 「クエンティン……」 心配そうに理音が見つめる。 「だいじょーぶよ。足止めするくらいなら、出来るわよ」 『目的地に到着するまでならば、可能です』 「ほら、エイダも言ってるんだしさ」 「…………」 理音はうつむく。 彼女をサポートできないのがこんなに辛いとは。 だが、いまは頼るしかない。 ややあって意を決したように顔を上げた。 「頼んだわよ、クエンティン」 「まっかせなさーい」 窓が開けられる。高速の風が雪ごと車内に吹き込み、一気に寒くなる。 「車からできるだけ離れないように。では、頼みましたぞ」 「ラジャー!」 クエンティンの背中の羽からエメラルド色の粒子がほとばしる。 出撃。 つづく 前へ 先頭ページ 次へ
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2つ名 辞典 各作者様の登場人物紹介から抜粋させていただきました。 なお、Wikiに登録及び出演しているキャラクターのみです。 また、新キャラや新たな2つ名誕生の際は各作者様ご自由に更新OKです。 [非]= 非公式バトル [ロ]= ローカル(一部地域でのみ通用) [自]= 自称 《マスター編》 《アキース・ミッドナイト》・橘 明人 橘明人とかしまし神姫たちの日常日記 《G》・日暮 夏彦 HOBBY LIFE,HOBBY SHOP [非]《屍ケン》・ケン Mighty Magic 《死の恐怖-スケイス-》・橘 明人 橘明人とかしまし神姫たちの日常日記 《ソードマイスター》・浅見 秋人 春夏秋冬 《Dコマンダー》・日暮 秋奈 HOBBY LIFE,HOBBY SHOP [ロ]《公式武装主義者(ノーマリズマー)》・マイティのマスター Mighty Magic 《破壊大帝》・日暮 秋奈 HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 《神姫編》 《紅き目の狙撃手》・十兵衛(銃兵衛) 凪さん家の十兵衛さん 《うさ大明神様》・ジェニー(ジェネシス) HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 《Encount Striker》・ジェニー(ジェネシス) HOBBY LIFE,HOBBY SHOP [非]《クリムゾンヘッド》・シエン Mighty Magic 《紅の牙》 アリア ・ねここの飼い方 《紅の剣客戟》・十兵衛(真・十兵衛) 凪さん家の十兵衛さん 《見敵必殺の神姫 》・ジェニー(ジェネシス) HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 《黒衣の戦乙女》・リン 武装神姫のリン 《銃剣士(ガンブレイダー)》・ミコ 橘明人とかしまし神姫たちの日常日記 《十兵衛ちゃん》・十兵衛 凪さん家の十兵衛さん 《神速の紅眼》・十兵衛 凪さん家の十兵衛さん 《スピットファイア》・アガサ ねここの飼い方 《青龍》・ベルセルク HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 《隻眼の悪魔》・十兵衛 凪さん家の十兵衛さん 《B3(ビーキューブ)》・バーニング・ブラック・バニー 《紅霧の剣》・十兵衛(真・十兵衛) 凪さん家の十兵衛さん 《雷龍剣(サンダーソード)》・ベルセルク HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 《乱射魔(トリガーハッピー)》・コニー 岡島士郎と愉快な神姫達 《緑色のケルベロス》・ノアール 橘明人とかしまし神姫たちの日常日記
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すとれい・しーぷ010 日も真上に射そうとする頃、ようやく上体を起こしたオーナーは、まだ眠たげな目をしばたたかせながら、自身の頭を軽く小突く。そして小さくため息をついた。 「あの、オーナー、どうかされました?」 げんなりと、ベッドから降りようとしないオーナーの元へ、デスクから飛び降りながら問うと、彼女は、わたしの身を気にしながらも窓の外を見るのだった。 「完全に二日酔いだね…頭痛い」 再度頭を刺激するオーナーの表情には、しかと反省の色が見える。 フツカヨイ、とはそんなに辛い物なのだろうか? 昨日唐突に開かれた、オーナーとわたしの祝勝会。 最初こそ、和やかなムードで始まったのだが、夜が深くなるにつれ、参加者のテンションが一変。 興奮してシャウトする碧、それを止めようと酒瓶を片手に装備したラン。 泣きながら意味不明な言語を発する紅。 オーナーに至っては、なぜか栓の開いていない大量のワイン瓶を器用に積み上げ悦に浸っている。 酒を飲まない神姫達は、半ば呆れ気味に己のオーナーを見守る中、それは起きた。 お祭り大好き神姫・ライアがハメを外し、専用のバトルフィールドでもないのにメルの旋牙振り回し始めたのだ。 超重量を誇るドリルを、特殊な武装もしていないライアに扱えるはずもなく、彼女は呆気なくテーブルから転落していった。 落ちるだけでは事足りず、地面に突き刺さったドリルの回転に散々遊ばれた挙句、アームパーツが引っこ抜けて飛ばされたのである。 ライアの飛んだ方向にあったのは、オーナーの積み上げたワインタワー。 最下部を破壊された塔は、無残にも悲鳴を上げ崩れ去ってしまった。 傍に居たオーナーは勿論、周りで思い思いはしゃいでいた神姫オーナー達は、頭からワインをひっかぶる事になった。 「昨日は確かにはしゃぎすぎました…ですね…」 たはは、と真っ赤に染まった床を思い出し笑うと妙な敬語になってしまい、さらにばつが悪い。そういえば、昨日の宴会代は誰が負担したのだろうか、わたしの頭に、ふとそんな疑問が過ぎる。 大量のワインをダメにしてしまったのだ、負担者は多大なダメージを負ったに違いない。 まさか、ランが負担したわけではないだろう。彼女は学生だ、と言っていた。 「オーナー、昨日のお酒の代金は一体誰が…?」 一瞬の間。もしや聞いてはまずかったのだろうか。俯いた顔を恐る恐る上げると、オーナーの丸い瞳が映った。 「あぁ、たぶん父さん?あの店の経営はうちだから」 窓からさわやかな風が一陣、オーナーの柔らかい髪をさらって吹き抜けた。 それはわたしの声にならない悲鳴だったのかもしれない。 まさか、お父様にまで迷惑をかけてしまうとは。 わたしの小さな胸は、罪を犯した友人(知人?)のためにジクリジクリと痛んでいた。 もう一週間になる。 オーナーは気にするな、と言ってくれるのだが、どうもそんな気にはなれない。 のか、と後悔ばかりがわたしを追い立てる。 そんな暗雲のような思考回路を裂くかの如く、それはやって来た。 「神姫の起動の仕方がわからない?もしかして、機械音痴?」 オーナーの呆れた眼の先に正座で俯いているのは見知った顔。紅だった。 最近になって気づいたのだが、オーナーがこのように毒づくのは紅に対してのみだ。 トクベツ、そんな言葉が浮かぶが、かぶりを振って振り払う。 オーナーのトクベツは、わたしだけで十分。 「ぐ…仕方ないだろう、俺は今まで神姫に興味がなかったんだから」 図星をつかれようやく出た言葉は搾り出したかのような羞恥にまみれた言葉だった…と思う。オーナーの家に来るくらいならばお店でサポートしてもらったらどうなのだろうか。 俯き続ける紅を冷ややかに見つめると、さらなる攻撃、否、口撃が飛んできた。 「ランに聞いたらよかったんじゃないの?」 にやにや顔でオーナーは続ける。完全に楽しんでいる。間違いない。 しかし、なぜランに?ランといえば、あのワイン事件の犯人ライアの主である。 「かっこ悪くて頼めるものか、妹だぞ…」 妹、と。紅の口からはとんでもない言葉が零れた。ランと紅が兄妹。 そろいもそろってこの一族は…。 ふつふつと理不尽な怒りが沸いてきた頃に、オーナーの小さく、可憐な笑い声が背後から聞こえてきた。 それは耐えいれずもれた笑い、とでも言おうか、抑えようにも止まらない、といった笑い。 よほど俯く紅がおかしかったのかオーナーはそのままベッドの倒れ込んでしまった。 「っくく、いいよ、教えてあげる」 いまだ笑いを堪えながら、宝石のような眼の溜まった涙を指で拭うと、オーナーはそっと手を伸ばした。その行為にドキリとしたのは、わたしだけではなかったはず。 白い紙袋に入れられたやや大きめの箱を取り出すと、オーナーはまじまじと箱の中身を窓から見つめた。慈しむようなそんな優しい眼差し。 わたしも起動前にあのように優しい瞳で見つめられたのだろうか、想像するだけで胸が熱くなった。 しかし、視線を上げたオーナーの目は悪戯っぽく紅を捕らえる。 「いい趣味ですネ」 意味ありげに口端を上げたオーナーの顔は小悪魔、いや悪魔……魔王にすら見えた。 紅は終始俯いている。 ゆっくりとデスクに降ろされた箱の中身。当然、同じ神姫として気になるもので… 本棚や引き出しを足がかりにデスクへと飛び乗ると、大きな箱の中に瞳を閉じた状態でピクリとも動かない神姫が鎮座していた。 淡い紫のストレートの髪に、整った顔立ち。小さく開いた唇はまるで花のようで。 スラリと長い手足は、Tall素体のものだろう。黒いペイントが白い肌に映えて美しい。 「ルキスもこれで先輩神姫だね」 先輩…なんだかくすぐったいような響きに顔が熱くなるのを感じた。 メルのような素敵な先輩になれるだろうか? 白い手が、わたしの頭上を滑り、箱へと伸ばされた。 封印シールを長い爪で切ると、段重ねになっているブリスターを引きずり出す。 その一つ一つの動作ですら待ち遠しい程わたしの胸をときめかせるのだ。 一番上のブリスターで眠る神姫をオーナーが抱き起こすと、起動のための講義が始まった。 『AVANT PHYSIQUE製 MMS-Automaton神姫 ヴァイオリン型紗羅檀 APV14』『セットアップ完了 起動します』 ここまで来るのにどれだけの時間が経っただろう。思わず何度か省電力モードに移項してしまった程だ。 現に窓の外は色を変え、赤く染まる空の境界が夜闇に侵食されつつあった。 こんな調子で本当に神姫と付き合っていけるのだろうか、一抹の不安の元、機械的な音声が疲弊した紅に突き刺さった。 『オーナーのことは何とお呼びすればいいでしょうか?』 いきなり話しかけられ挙動不審になる紅をなおもオーナーは笑い続けている。 確かにこの男、飽きない。催促するように二度目の呼びかけが発せられると、紅は咳払いをして声を潜めた。 「お、オーナー?」 どこか照れくさそうに頬を染めてそっぽを向く紅。それを見て腹を抱えるオーナー。 段々と紅が哀れにすら思えてくるが、オーナーが楽しければわたしはそれでよかった。 「では、私の名前は何になさるのかしら?」 機械的な音声ではなく、今度は涼やかな声が起動したての神姫から零れた。 腕を組み、タンタンと足でリズムを取る。早くしなさいよ、と言わんばかりの行動にわたしは目を丸くした。こんな神姫もいるのか。 どうもわたしは彼女とは仲良くなれなさそうだ。 「キミの名前、そうだな…ミューズ、とかはどうだい?」 きょどる紅に問うようにオーナーが至極優しく、黒い神姫の名前を告げた。 ミューズ9人いるとされる神々の娘。ヨーロッパの多くでは音楽を意味する言葉。 確かに、ヴァイオリン型の彼女にはぴったりといえるだろう。 「貴女が決めるのかしら?この木偶坊ではなく?」 紗羅檀はあくまで高圧的に顎で紅を示すと、腕を組みなおした。 ピリピリした空気の中、オーナーだけは柔らかい表情を崩さない。 「約束したんだ、キミのオーナーと。キミの名前を考えるって」 うっとりするような優しい声に観念したように紗羅檀は腕組を解いた。ふわりと笑みを零す。 「気に入りましたわ。貴女、なかなかのセンスですね」 紗羅檀、いや、ミューズの言葉に満足したのか、オーナーは極上の微笑を浮かべると、紅にバトンタッチするように手を引いて、彼女の前んい立たせた。 神姫オーナーになったことに実感が沸かないのか、惚けた顔で彼女の前に立った紅は絵に描いたようなダメ男だった。それがおかしくてオーナーは何度目かわからない笑いを零すのだった。 next .
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設定ダブっていたらすいません。 形骸化するかもしれないけど一応。 使えそうな設定があれば使って構いません。 バトル形式 アンリミテッド 筐体で神姫同士を直接戦わせる形式。 大きな大会やFバトルなどの主流だが、ゲーセンでも可能。 バトルロンド 電脳空間で神姫を戦わせる形式。 メジャーな形式で、その気になれば全国どころか全世界の神姫との対戦が可能。 ライドスタイル 神姫ライドシステムを用いて、一体化して戦う形式。 Fバトルではアンリミテッド形式と併用される時もある。 ストリート 野外などで行われる形式。 アンリミテッド形式と性質が近いが、保証外の可能性が高い。 ファイトネーム 神姫マスター達が本名とは別に、神姫バトルで用いる呼び名。 二つ名 神姫に付けられる、一種の称号。 バトルスタイルや特徴から命名される場合が多い。 ただし、嘲笑うかのように皮肉ったものを付けられる場合もある。 他作品での一例として、赤羽雷神の 下から二番目(セカンドラスト) 、タカヤ・ノリコの 全滅娘 など。 神姫の機構等 構造系 骨格フレーム(人間で言う骨。頭蓋骨相当のものもある)、アクチュエータ(関節)、CNT製の人工筋肉(筋肉。股関節や顔面等に採用)、バッテリー、コアユニット(脳。バトロンでの頭部)、CSC(中枢部。脳機能もある) 、外装(外皮や頭髪等)などで構成。細かい部分は公式とか参照。 人工筋肉についてはMGRを参考にした。 外装は作者の言い回しの都合。 機体強度について バトマスでのアーティルイベントの動画を見て参考に。 多少の衝撃や負荷では破損しないくらい頑丈。 コアユニット及びCSC周り(主に内装部)は特に強靭で、神姫の武器で損傷させるのは困難。 ただし”困難”なだけで、損傷しないわけではない。 稼動時間について 稼動状態により変動するが、フル充電の状態から約二日、省電力モードなら数日。 大容量バッテリーや高効率の駆動系等を使えば多少延びる。 充電は1日1回を目安に。 充電はフル充電と急速充電がある。 人工筋肉について MGRの設定を参考にした駆動システム。 柔軟な稼働と高い靭性を兼ね備える。 一部の関節がBLADE氏のアレ風な感じのラインになるということで。 オリ武装 自作もしくは特注された装備など。 他の作品にも出る「オリジナルのパーツ構成」によるものも含む。 ライドレシオ ライドスタイルにおける概念で、所謂「同調率」「シンクロ率」のこと。 最大同調時はライドレシオMAXともいい、戦闘力が上昇する。 バトルモード バトロンからの流用+α。 神姫の最大戦闘形態。略称はBM。 追加設定として、「アンリミテッドルール等のリアルバトルでも発動可能」「ライド状態でも発動可能」「発動はある程度任意で可能」 その他的なもの ライドオンギア MoonAngelから採用。 ライドシステム用のガントレット型アイテム。略称はROG。 ストリート等で用いられる。 バイザー 幾つかの作品でおなじみ(?)アムドライバーの戦闘ビークル。 巡航形態バイザーモードと戦闘形態ブリガンティモードの形態をもつ。 そのまま運用したり、オリ武装に組み込まれたりする。 死に設定になる可能性ががg ちなみに作者はバイザーシリーズを持ってない。当時欲しかったが。
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バトル環境の設定 Michelle stage-001 神姫バトル用筐体 ミッシェル・サイエンスの作った神姫ヴァーチャルバトル用設置型筐体 かなり大型 筐体の構成は、本体とプレイヤーブース二機で構成されている 本体はタッチパネル式のインフォメーションディスプレイと観戦用大型スクリーンがある プレイヤーブースは神姫投入用ポッドと追加投入ポッド、指揮用デスクセットがある。外から見えないように扉もついている 三年間の定期的な稼動データ提出の引き換えに、破格の安値でゲームセンター等に販売している フィールドの広さ、最大高度、最低深度などを細かく設定できる。ただし制限時間は設定できない 戦闘可能神姫数は理論上無制限であり、戦闘中であっても他の追加投入ポッドから神姫を投入することができる ただし、武器防具等の装備品のみの追加投入はできず、神姫が装着して追加投入のみ可能となっている LPが無くなるか、戦意を喪失した神姫は自動的に筐体から排出され、試合終了まで再投入は不可能 試合終了条件は神姫の全滅かマスターによる投降であり、どちらかが満たされるまでは終わらない 神姫投入用ポッドは大人が一人入れるほどの余裕があるが、もちろん人間が入ってもバトルはできない 筐体自体にいくつかのバトルステージが登録されているが、拡張カードを使用すれば知識のない一般ユーザーにも簡単にステージを製作することができる Michelle stage-001 PLUS バトル筐体用拡張カード ミッシェルのバトル筐体のステージを個人的に作るための拡張カード 全国に販売中 一枚のカードで、最大20個のステージデータを登録できる 広さ等はもちろん、配置するオブジェクトや水辺や丘などの地形、雨や雪などの天候、動物などのギミックまで設定できる 武器縛り等の特殊ルールも設定できるので、全てを合わせるとかなりのバリエーションになる 自分に有利なステージや自分に不利なステージを作って、戦いに幅を広げてみよう バトルの手順 易しい?使い方マニュアル バトルを始めるには 1、まずは本体のインフォメーションパネルで受付をしましょう (以降分岐) (挑戦を受ける側) 2、戦いたいステージがあるなら設定しましょう。特に無ければランダムに決められますが、挑戦者が設定した場合はその設定が優先されます 3、ディスプレイが「挑戦者待ち」の表示になったらあなたの準備は完了です、画面に指定されたプレイヤーブースで準備しましょう 4、挑戦者が来るまで神姫の準備をしながらゆっくり待ちましょう。焦らずじっくり待てる余裕が勝利へ繋がるかもしれません 5、挑戦者が来たら、一度挨拶をしておくと良いかもしれません。心地よい挨拶が新たな繋がりになるかもしれません 6、指揮席にあるディスプレイの表示に従いって神姫と、拠点に配置する追加武装を投入用ポッドにセットしましょう 7、全てセットしたら準備完了のボタンを押しましょう。投入用ポッドのシャッターが自動で閉まりますので、手などを入れないように注意してください 8、準備が完了したら指揮する方法を決めましょう、直接声をかける方法がポピュラーですが、ヘッドセットやキーボードによる指示にも対応しています 9、相手の準備が完了したら、いよいよバトル開始です。神姫たちと共に勝利を目指しましょう (挑戦する側) 2、インフォメーションパネルで挑戦者待ちの人がいるかどうか確かめましょう。受付済みの人がいたら、相手が知り合いでも知り合いでなくても対戦を申し込みましょう 3、戦いたいステージを設定しましょう。相手がステージ選択をランダムにしていた場合は、あなたの設定した内容が優先されます 4、ディスプレイの画面が「受付完了」の表示になったら準備完了です。画面に指定されたプレイヤーブースで準備しましょう 5、準備の前に挑戦する人に挨拶しておくのも良いでしょう。もしかしたら相手の手の内を見れるかもしれません 6、以下、挑戦を受ける側と同じです。神姫たちと共に頑張りましょう もどる